高齢事業
どんな声にも耳を傾け
目の前の方のお話を“正しく”理解したい。
阿倍野区北部地域包括支援センター
2010年 社会福祉士後藤弘樹
育徳園に入ったきっかけは?
大学時代のゼミの先生からの勧めで、春休みに特別養護老人ホームいくとくにボランティアとして訪れたことがきっかけでした。いくとくの中のデイサービスで週に数回、アルバイトとして働かせてもらい、その流れでの入職です。デイサービスでの時間が単純に楽しかったんです。ご利用者の皆さんとレクリエーションでワイワイ言いながら盛り上がり、楽しい時間を過ごす中で「こんなところで働けたら良いな」と漠然と思っていたところに、「ここでそのまま働いてみない?」とお声がけいただきました。平日は学校で授業を受け、土曜日にデイサービスで1週間を締めくくるというリズムが自分にしっくり来たことと、ご利用者や職員の雰囲気がとても良かったのも、入職の理由のひとつでした。当時、介護職は大変な仕事のイメージもあったのですが、実際に現場で働いてみることで「皆さん元気やな、思っていた高齢者像と違うぞ」と、そこに面白みを感じ、だんだんと惹かれていきました。やはり、自分の目で見て経験しないと分からない部分ではありました。
入職してからの仕事はどうでしたか?
育徳園に正職員として入ってからは、私は異動がとても多かったんです。入職当初は特養で、その後にいくとくⅡでデイサービス、そして(以前育徳園が運営していた)地域包括支援センター、続いて、いくとくのデイサービスにアルバイト以来10年ぶりに戻り、そこから特養の相談員を経て、今の地域包括支援センターに至るという経歴です。色んな部署を転々としましたが、その度に丁寧な指導により、育てていただき、今の自分がいますね。様々な介護の現場を経験させてもらえる環境にいることが、有り難いなと感じます。
普段の仕事内容は?
地域包括支援センターという場所は、一言で言うと、普段のお困りごとを何でも相談してくださいねという相談窓口です。例えば、介護保険についての相談や障がいをお持ちの方や生活困窮の分野のご相談、成年後見や権利擁護のことについてなど、内容は多岐に渡ります。役所だとどの相談窓口に行けば良いか分からずに時間が過ぎてしまう、というようなケースでも、相談に来てもらえるとワンストップで対応させていただき、来られた方が、何か解決に向けて動き出せるひとつのきっかけになることが地域包括支援センターの機能だと思います。私たちから関係機関へのつながりが様々にあるので、相談内容に応じて適切な機関へおつなぎさせていただいたり、連携して一緒にその方の支援のために動いたりします。
また、相談を待っていれば良いというものではなく、「包括って何なん?」というお声も少なくないので、ここの存在を地域の方々に知っていただくために広報的な活動をしています。地域の主要な方や町内会長さん、民生委員さんやコーディネーターさんとつながりを持っておくことも大切なことですね。自分たちの足を使って地域とのネットワークを築いていくことも仕事のひとつです。
仕事をする上で大切にしていることは?
「何かあった時の育徳園さん」と思ってもらえるような場所になれるよう意識することです。地域とのつながりを持っておくことの大切さにも関係しますが、どんな些細な声でもひとつひとつ拾い上げていくことが私たちの役割だと思っています。例えば、野菜マルシェに買いに来ていただいた方と世間話をする中で、「最近膝痛くて歩くのつらいねん」など、普段悩んでいることをお話してくださったりする中で、地域の課題が見つかったりすることもあります。どんな話の中にもアンテナを立てること、小さな声も取りこぼさないようにすることが地域密着の一歩だと思い、日々仕事に取り組んでいます。
「福祉のど真ん中」ってどんなことだと思いますか?
先ほどお話した、地域の方のどんな声も取りこぼさないということにもなるのですが、そこで大切にしていることはあります。相談に来られた方の主訴を正しく理解するということです。「福祉のど真ん中」と言えるかは分かりませんが、これも私が仕事をする上で大切にしていることのひとつです。ご相談者のお話を聞いていると「今お話されている困りごとの裏には、こんな悩みが隠れているんじゃないかな?」という場面があります。「介護のことについての相談で来られているけれど、実はご本人の周りにコミュニティーが無くて寂しいことが本当の課題なのではないか?」というようなことです。目の前の方の言葉から何を感じ取れるのか。ご相談者のおっしゃる困りごとの連携先を紹介して終わり、と、そういうことではなくて、言葉の端々から感じ取れるニュアンスなどをしっかりと理解することが大切だと思っています。やはり、自分の悩みや弱みを相談するって、話しにくいこともあると思うんです。そこを理解した上で相談を聞くこと、そこがこの業務をする上で、福祉という意味で重要なことだと考えています。